オー・グッド・グリーフ

脱サラまであとどのくらい

たまに学生気分に戻れれば

知り合いが早稲田でライブをやるということで見に行ってきた。

 

早稲田駅で降りたのは卒業式以来、半年ぶりだった。会場のライブハウスがサイタの家のすぐ近くだったので、思い付きでサイタを誘い、ライブ終了後はサイタと早稲田を徘徊した。

 

在学中は大学に思い入れなんて一つもないって思っていたけど、ちゃんと懐かしさを感じたから驚いた。よく行っていたドトールモスバーガー、駅からキャンパスまでの道、留学センターなど、ひとつひとつがちゃんと懐かしかった。

 

終電間際まで早稲田に残っている人達はもちろんみんな大学生で、好きな服を着て、好きな髪色にして、そんな当然のことが、とても羨ましかった。

 

ここだけ時空が歪んでいるんじゃないかと思うほど、朝の中央線や昼のオフィスとは時間感覚が違っていた。早稲田を歩く若者たちは、水曜日なのに、みんなまだまだ夜はこれからという顔をしていた。

 

学生と同じ空気を吸っていたらなんだか学生に戻ったような気分になって、キャンパスの入口前に腰掛けてサイタと他愛もない話をした。たまにこういう夜があれば大丈夫だなと思った。何がというわけではないけれども、なんとなく大丈夫だと思った。

一緒に歳をとる人

昨日は母校の吹奏楽部の定期演奏会だった。僕達の代は高校を卒業してから7年が経つんだけど、なかなかの出席率で全25人中15人くらいの人が観に来ていた。演奏会は昼過ぎに終わり、まだ日も暮れていない頃から飲み会が始まった。

 

これまで高校の友達と久しぶりに会った時には、頭の中がパチっと高校生の頃に戻るような感覚があった。当時の友達と、当時の喋り方で、当時の目の輝きで話すような、そんな感覚があった。

 

でも昨日は違った。喋っていたのは紛れもない現在の自分達だった。高校生に戻って騒ぐというよりは、高校時代を一緒に過ごした大人達が話しているという感じ。みんな24歳、25歳になっているんだから当然か。高校生に戻れる期間はもう終わったんだなってちょっと寂しくなったけど、それはそれで悪くはない。

 

ドイツ語が好きだったミサキちゃんがちゃんと海外取引をする仕事に就いていたり、恋愛と縁遠かったイワセが年内に挙式を予定していたり、高校を休みがちだったヒグチくんがサンフランシスコで学会発表をしていたり。

 

いろんな生活を聞いて、みんな一緒に大人になっているんだなと思った。やっている仕事は違うし、付き合っている人も違うけど、仕事や恋人と全力で向き合っているというところは同じだった。これからもひとつずつ、一緒に歳をとっていくんだと思う。同級生って心強い。

スーツを着るのも悪くはない

学生の頃の友達と会って、学生の頃と同じように遊んでも、やっぱり以前とは何かが違う。時間が無限にあった時の休日と、時間が限られている時の休日は、プレミア感が違う。休日が終わりに近付く頃の、胸が締めつけられるような感覚が好きだ。小学生の頃、夏休み最終週に感じていた気待ちに似ている。

 

昨日嬉しかったのはお会計。中学の同級生4人で飲み食いして、さあお会計ってなった時。ここ数年みんなは社会人で僕だけ学生だったから、まあいいよ多めに出すよ、と言われることが多かった。純粋にありがたかったんだけど、ちょっと寂しい気もしていた。でも昨日は違って、きっちり4で割った。いいなこの感じ、と思った。スーツを着るのも悪くはないと思った。

 

一昨日は会社の帰りにスタジオに寄った。僕が今やっているバンドがフリーペーパーに載ったということで、それをチェックしに行った。昔からお世話になっている地元のスタジオ。いつもいる長髪のお兄さんがいた。生憎フリーペーパーは置いていなかったが、お兄さんと久しぶりに話をした。

「4月から会社に入ったからバンドをやる時間が減っちゃったんです」

と僕が言ったら

「いいことじゃないですか」

と言っていた。スタジオの店員さんが言うとなんだかおかしい。会社に入らないでバンドをやり続ける人達からお金を搾り取るのがお兄さんの仕事なんだけどな。

 

会社に入っただけでお馴染みの人や街が違って見えてくる。それがなんとなくおもしろくて、まだしばらくは会社勤めを続けようと考えている。

薬指の指輪

入社三週目。思った以上に会社の居心地がよくて困惑している。まだ簡単な業務しかやらないからそう感じるだけだとは思うが、入社式前日に思い描いていた地獄のような生活は、どうやら思い違いだったようだ。

 

昨日は仕事を終えた後、サナと待ち合わせて焼肉を食べた。お腹がとても空いていたし、一日働いたという充足感もあったから、いつもよりカルビがおいしかった。

 

なんだか人並みに幸せじゃんと思ったら、ふとナカジマさんの話を思い出した。ナカジマさんというのは、前に綾瀬のライブハウスで出会ったおじさんだ。その日僕は弾き語りで自作曲を披露した。するとライブ終了後にナカジマさんが缶ビールを奢ってくれて、

「君は変な曲ばかりやっててええな!」

と褒めてくれた。

「そういう変な曲をずっとやり続けてな。だいたい皆途中でやめてまうねん。仕事が面白くなったり、結婚したり、子供ができたり。そうやって俺の周りもみんなやめてもうたわ。君はずっと続けてな。」

関西弁が正しいかはわからない。まあ概ねこんな感じだったと思う。

 

当時はまだまだ学生真っ盛りだったから、もちろん続けますよという気持ちで話を聞いていたが、会社に入ってみるとナカジマさんの言葉が重みを増してくる。

 

安定した収入を確保した上で、家庭をもったりすることに対する憧れが大きくなってくる。音楽への熱狂は日に日に小さくなってくる。

 

高校生の頃から僕は、とにかく有名になることを目標としてきた。名前が売れることこそが幸せだと思ってきた。しかしここ数日、飛び込み営業で数多のオフィスを訪問して、名前が売れない仕事は本当に無数にあるんだなと思って、でもそういったオフィスで働く人の薬指には指輪があったりして、幸せは有名無名とは全く別の話だよなあと実感している。

黒板水拭き事件

週末は相変わらずだった。

 

土曜の夜、高三の時に同じクラスだった男5人でお酒を飲んだ。最後に集まったのはもう何年も前だったが、昨日も会っていたかのように自然だった。最後に会った時に公務員を目指していたミゾグチはちゃんと公務員になっていた。しかし選りに選って下水道課に配属されたらしい。その話を聞いたタツマが

「人事見る目あるね」

と言っていたのが容赦なくて笑った。

 

一番笑ったのはアケヅマの話だ。何度聞いても新鮮に笑える高三のある日の思い出話。

 

その日アケヅマは日直で、次の授業のために黒板を念入りに掃除していた。しかしそれが仇となった。授業が始まると先生が

「黒板が消えにくいな。誰か水拭きしただろ。」

と言った。僕達は知っていた。犯人はアケヅマだ。しかしアケヅマもよかれと思ってやったことだ。どうか許してやってほしい。心の中でそう唱えていたと思う。

 

授業終了後、アケヅマが姿を消した。皆が体育の着替えをしている教室にアケヅマの姿はなく、にわかにアケヅマが自責の念に駆られて自殺したという説が浮上した。黒板を雑巾がけしたことがきっかけで自殺する、というわけわからなさに当時大爆笑した。そしてあの日から7年経った一昨日もまた大爆笑したのだ。

 

ブログという場に書くことが憚られる程の内輪ネタだがあえて文字に起こしてみた。こういう内輪ネタって大人になった今でもたまに僕達を励ましてくれる。

音楽と労働

そもそも僕には音感もリズム感も全然無いんだけど、それでもなんだかんだデビューできるんじゃないかと思っていた。運があれば売れると思っていた。しかし現実は非情であり、赤字ライブを繰り返しているうちに就活が始まった。

 

音楽の代替案として始めた就活がうまくいくはずもなく、数多の会社に不採用を宣告された。70社~80社くらい落ちたと思う。この数字、一切盛っていない。3月1日の就活解禁日から就活を始めて、翌年2月まで続けていたらそうなる。

 

僕は二浪して行きたかった大学に行ったから、長く続けていれば最終的にはうまくいくんじゃないかと思っていた。しかし、社会は受験勉強のように甘くはなかった。

 

生きるのが上手い人とは、容量がいい人、あるいは容量が悪いけど諦めがいい人のこと。生きるのが下手な人とは、容量が悪い上に諦めが悪い人のこと。僕は完全に後者である。

 

それでもまだ、心のどこかで機を窺っている。会社員になっても音楽を続けて、脱サラする自分を夢見ている。

 

でもとりあえずは明日から、真剣に働いてみようと思っている。何をするにもお金がいるし、会社員になって初めて知れることがあるはずだ。大学の卒業式の日にカトウが言っていた言葉、「覚悟はないけど諦めた」っていう言葉にとても共感した。

 

前にセイジが言っていた言葉も思い出す。ろくに働かず小さな劇場で公演を繰り返す輩の演劇を、セイジは「労働からの逃げ」と表現した。これは丸っきり音楽にも当てはまることで、労働からの逃げとしての音楽が、下北沢や高円寺には溢れかえっていると思う。フリーターはカス、サラリーマンはエライ、という短絡的な話ではなく、もし僕がこのタイミングでフリーターになったら、と考えてみる。ろくにファンもいないのにライブを繰り返すだけの自称ミュージシャン。まさしく労働からの逃げになると思う。

 

労働しながら、少しずつ脱サラの準備を整えていけたらいい。昨日、立川で初めて自主企画ライブというものをやった。準備も後始末も大変でもちろん赤字だったんだけど、とても楽しい夜だった。もともと好きだった人達と、新しく好きになった人達が一堂に会していた。昨日みたいな夜が赤ではなく黒になるようになったら、胸を張って会社を辞めようと思う。

エプロンと三角巾

会社員生活が始まるまでの地獄のカウントダウン。残すところあと3日となった今日は、サナが働く中華屋さんに行った。近所の常連さんが集うお店で、開店すぐからたくさんのお客さんがいた。

 

サナはエプロンに三角巾という姿で働いていた。前に浴衣姿を見た時も思ったけど、サナは江戸の町娘みたいな格好がよく似合う。本人は老けたくないと言っていて、それはもちろん当然の気持ちだと思うけど、きっとサナは歳をとったらかわいいおばあちゃんになると思う。

 

ここで働き始めたのは今週からなのに、もうてきぱきと仕事をこなしていてすごいなあと思った。適応能力がうらやましい。これから週6で働くらしい。僕もがんばって働かないとなと思う。

 

お互いお金を貯めて、いつになるかはわからないけど最終的にはふたりでライブハウスをつくろうという話をしている。サナの接客能力があればきっとうまくいく。フードは全部中華にして、麻婆丼を食べながらライブを見てもらうシステムにしよう。

 

来週から始まる僕の仕事は、別段好きなことでも興味があることでもないけど、なんだかんだ続けられる気がする。ずっと先には楽しいことが待っている気がする。